涼宮ハルヒと一晩中 3
第3章「夜に溶ける、鼓動と吐息」 温泉から上がったあと、俺たちは浴衣姿のまま、宿の一室――一応、俺の部屋に戻っていた。 「ふーっ……やっぱり、露天って最高ね」 ハルヒは髪をタオルでざっくりと拭きながら、ぽふんと布団の上に仰向けになった。 その胸元はややはだけていて、白く柔らかい肌が月光に照らされ、なんとも言えない色香を放っていた。 「……ねえ、あたしってさ。ほんとに“変”だと思う?」 天井を見上げたまま、ぽつりと呟く。 その言葉の裏にある感情が気になって、俺は隣に腰を下ろした。 「いや……変だとは思うけど。だからこそ、魅力的っていうか……放っておけないっていうか」 すると、ハルヒは顔をこちらに向け、ゆっくりと上体を起こした。 「……ふーん。なら、ちゃんと責任取ってよね」 彼女の手が、そっと俺の手を取る。 そして、そのまま自分の胸元へ導くように、静かに押し当てた。 「ほら……あたし、こういうの……初めてだから」 その声には、明らかな緊張と震えがあった。 だがそれは、拒絶ではない。むしろ、心を許した者にしか見せない弱さ。 手のひらに感じたのは、柔らかさと温もり、そして鼓動。 浴衣越しでも伝わるふくよかさに、理性が溶けていく。 「……ハルヒ……」 名前を呼ぶと、彼女の頬が赤く染まり、その瞳が潤んだ。 「……ねえ、キス……したい」 彼女からのその一言に、全身がビリビリと痺れた。 気がつけば、俺は彼女をそっと抱き寄せていた。 唇と唇が、ほんの一瞬迷ってから、触れ合った。 初めは軽く、確かめ合うように。だが次第に、お互いの吐息が熱を帯び、唇が吸い合うように深くなる。 「……っん、ふぅ……ん……」 ハルヒが喉の奥で小さく甘い吐息を漏らしながら、俺の背に腕を回してきた。 唇を離すたびに、彼女の瞳はとろんと潤み、濡れた吐息を漏らしては、また求めてくる。 「こんな気持ち、知らなかった……なんか、胸がぎゅうって、苦しくなるの」 そう言って、ハルヒは自分の胸元に置かれた俺の手に、さらに手を添えた。 まるで「もっと触れて」と言うように、俺の指をそっと導いてくる。 その柔らかさと熱に包まれて、俺はもう後戻りできないと悟った。 そして、ハルヒも同じ気持ちでいてくれるのだと、伝わってきた。 「今夜だけは……あんたのこと、全部預けてもいい?」 その一言は、あまりにも破壊力があって。 俺たちは静かに、そして確かに、お互いの距離をゼロにしていった。