朝比奈みくるちゃんと一晩中 3
第三章「指先に伝う、震える未来」 旅館の部屋に戻ると、俺たちは自然と隣り合って座った。 あの湯けむりの余韻がまだ体を包んでいて、沈黙さえ甘く、熱を含んでいた。 耳の奥で、どくん、どくんと自分の鼓動が鳴っている。 「……あの……さっきは……その……」 朝比奈さんが、浴衣の袖を握りしめながら口を開く。 濡れ髪が肩にかかり、艶やかな光を反射していた。上気した頬に、湯上がりの色気が滲んでいる。 「本当に……ありがとう、でした。こんな……どきどきするの、未来でもなかったから……」 その瞳の奥に、震える光。 俺はそっと、彼女の手に指を伸ばした。繊細な手が、一瞬戸惑ったあと、ゆっくりと俺の手を握り返す。 「……あったかい……」 小さく囁いたその言葉に、胸の奥がくすぐったくなる。 俺は彼女の手を軽く引いて、目を見つめた。 「……朝比奈さん」 「……ん……」 言葉はいらなかった。 俺たちは自然と顔を近づけ、唇がふわりと重なった。 「んっ……♡……ん……ふぁ……」 朝比奈さんの身体がびくっと震え、艶やかな吐息が漏れた。 唇は熱くて、柔らかくて、ただ触れ合うだけで全身が痺れるようだった。 彼女の肩に手を添えると、少しだけ驚いたような表情を見せたあと、目を閉じて甘えるように身を寄せてきた。 「……もっと、して……ほしいです……」 甘い声が耳元に落ちる。 その言葉が、理性を深く揺らした。 俺は彼女の背に手を回し、ぎゅっと抱き寄せた。 胸元に押し当てられる柔らかさが、確かな存在感を持って俺を刺激してくる。 そして、彼女の浴衣の合わせが、わずかに緩み…… 「……っ……こんなに……見られるなんて……」 恥じらいに頬を染めながらも、彼女は視線を外さない。 その目には、恥ずかしさ以上に……どこか、期待と受け入れの色があった。 「朝比奈さん……触れても……いい?」 「……うん……優しく……してくださいね……」 その一言に、俺の手は自然と伸びる。 浴衣の隙間から、そっと指先が入り込む。 ふに、と柔らかい感触。 掌いっぱいに広がる、あたたかくて、弾力のある……彼女の胸。 「んんっ……♡ あ……っ……ふぁ……」 彼女は肩を震わせながら、耳元で吐息を漏らす。 その吐息が甘すぎて、理性を溶かしていく。 指先が触れるたび、彼女の身体が反応する。息を詰め、吐き出し、目を潤ませて俺を見つめる。 「だめ……そんなに……されたら……変になっちゃいます……っ」 それでも、彼女の手は俺の浴衣の袖を掴み、逃れようとはしない。 震える身体を俺に預け、唇をまたそっと重ねてきた。 「ちゅ……ん……♡ はぁ……やっぱり……すごく……好き、です……」 唇の隙間から零れる愛の言葉。 そして、俺の胸元にそっと顔を埋め、彼女は囁いた。 「……わたし……こんな風に、誰かに触れられるの……初めてなのに……」 その声が切なげで、それでも幸せに満ちていて。 俺は、彼女を抱き寄せる腕に力を込めた。 「もう……どうなってもいいくらい……嬉しいんです……」 彼女の吐息が、耳元で甘くとろける。 指先に伝わる鼓動と柔らかさ。 ふたりの鼓動が重なり、ひとつになっていくようだった。 夜の帳が降りる部屋で、ただふたりきりの世界。 言葉よりも確かな、心と体のぬくもりが交差する――。