朝比奈みくるちゃんと一晩中 2
第二章「秘密の湯けむりと、ほんの少しの勇気」 湯船の中でぴったり寄り添う俺たちの距離は、肌と肌の感覚を越えて、心の奥にまで及んでいた。 触れ合う肩と腕。微かに揺れる湯面。ふわりと香る檜の香り。 「……あの、わたし……こんなふうに、誰かと一緒にお風呂に入るの……ほんとに初めてで……」 朝比奈さんの声は、湯気に溶けてしまいそうなほどか細くて、だけど耳に甘く届いた。 彼女の細い肩が俺の腕にそっともたれかかり、柔らかくてあたたかい吐息が、うなじから首筋にかかる。 「……っ……朝比奈さん……」 彼女の胸が、タオル越しに俺の腕に当たっていて――柔らかく、でも確かな重量感と温かさ。 ドクンと、自分の心臓が跳ねた音が聞こえた気がした。 「こ、こんな近くで……見ないでください……っ、恥ずかしいですぅ……」 彼女は胸元のタオルをぎゅっと握りしめ、俯く。 だけど、その仕草がかえって谷間を強調してしまい、思わず視線が吸い寄せられる。 「……そんなに……大きく見えますか……?」 恥ずかしそうに震える声。その奥に、微かに滲んだ期待。 「見えるっていうか……見ないようにする方が難しいっていうか……その……魅力的、です」 「んっ……そんなこと言わないで……もっと……恥ずかしくなっちゃいます……」 とろんとした目でこちらを見上げてくる。 頬は紅潮し、長い睫毛の奥で瞳が潤んで揺れている。 俺の右腕をそっと抱きしめたその瞬間―― 「……ふぁっ……♡」 彼女の口から、甘い吐息が漏れた。 その吐息が耳の奥まで染み込んできて、理性の壁を一枚ずつ溶かしていく。 「……あの……その……こんなに……当たってて……やっぱり、変ですよね……?」 「変じゃない。すごく……嬉しい」 彼女の肌が、湯気に濡れて滑らかに光っている。 その視線が、そっと俺の胸へ落ちていく。 「……わたし、昔から胸が大きいのが……ちょっと嫌だったんです……制服もすぐきつくなって……」 「……でも、今は違う?」 「はい……こうやって……好きな人に見てもらえるなら……少しだけ……嬉しい、かも……」 彼女はそっとタオルを直すフリをして、胸元を押し上げた。 視線が絡む。その柔らかな谷間に、唇が吸い寄せられそうになる。 「……近くに……来ても、いいですよ……?」 小さく囁いた声が、俺の耳元にふわりと落ちる。 抗えないほど甘くて、熱くて、優しい。 俺はそっと、彼女の隣へ身を滑らせる。 そして、その瞬間―― 「んっ……♡……あったかい……」 彼女が吐息まじりに身を寄せ、胸を俺の腕に預けてくる。 ドクンと脈打つ音が重なって、身体が熱くなる。 「……もう……ドキドキが止まらないです……」 そう言いながらも、彼女の手がそっと俺の指を握った。 それはあまりにも優しくて、そして確かな意志だった。 「……今日だけ、ですからね……こんな風に、くっついても……」 小さな声で告げられたその一言に、俺は黙って頷いた。 ――この温もりを、守りたい。 お湯の中で重なる体温と想い。 甘い吐息が、湯けむりの中に消えていく。