朝比奈みくるちゃんと一晩中 5

第五章「明日を忘れて、いまだけを」 　みくるさんのかすかな吐息が耳元にかかり、その声だけで胸が熱くなる。 　浴衣は布団の中で乱れ、肌と肌がむき出しで触れ合っていた。 　胸の奥から熱が湧いてきて、彼女の柔らかな胸の膨らみが俺の腕に押し当てられるたび、思わず息を呑む。 　「ご、ごめんなさい……なんか、もう……体の奥から熱くなっちゃってて……♡」 　顔を真っ赤にしながら、それでもみくるさんは逃げずに俺の目を見てくれる。 　その瞳は潤んでいて、どこか夢を見ているようだった。 　「わたし……こんなこと、ちゃんとするの初めてで……その……未来人として、研修中の立場なのに……だめ、ですよね……」 　「だめなんかじゃない。俺は、朝比奈さんが誰であっても、好きだから」 　そう言うと、彼女は驚いたように目を見開いて、ふっと優しく微笑んだ。 　「……ほんとうに……？　未来から来たわたしを……そんなふうに……」 　「もちろん。過去も未来も関係ない。今、この瞬間が全てだって思ってる」 　「……うう……そ、そんなこと言われたら……また変な気持ちに……♡」 　みくるさんがそっと俺の手を自分の胸元へ導く。 　それだけで、ふたりの間に流れる空気が一気に甘く、濃密になる。 　「ねぇ……お願い……少し、ゆっくりで……でも、深く、してくれますか……？」 　彼女の声が、どこまでも震えていた。 　ゆっくりと身体を重ねていく。 　直接的な言葉は要らなかった。 　布団の中、濡れたような肌がすり合わさり、重なり、ひとつになる感覚。 　「んんっ……ああっ……♡　そこ……深く、当たって……っ、くぅっ……♡」 　指先が布団をぎゅっと掴み、吐息が熱を帯びて甘く漏れた。 　肩が揺れ、乳房が重力に任せて波打つ。 　ふたりの身体が一度、深く沈み合うたびに、彼女の声がさらに切なく、愛おしく響いてくる。 　「ふぁっ……ぁあ……っ♡　あなたのこと、全部感じちゃって……頭がふわふわして……何も考えられなくて……っ」 　潤んだ目が俺を捉え、熱を持った瞳がすがるように潤んでいた。 　その視線だけで、鼓動が跳ね上がる。 　「禁則事項……です……けど……わたし、こうしてると……未来のことなんて、もう、どうでもよくなっちゃって……♡」 　それはきっと、彼女の中で最大限に許された告白だったのだろう。 　その一言が、俺の奥に深く刻まれた。 　「あなたとひとつになってる、この瞬間だけ……全部忘れたい……」 　彼女の指が俺の背中を撫で、背筋がぞくりと震える。 　抱き合う体の奥から、じゅわりと熱が広がっていく。 　みくるさんの胸が、腰が、太ももが、全てが甘く震えて俺に絡みついてくる。 　「っ……やっ……も、もう……止まらない……っ、こんなの……♡」 　唇が触れ合い、何度も重なり合う。 　舌先が絡み、熱を分け合うように、何度も。 　「好き……好きです……あなたのこと、何回言っても足りないくらい……♡」 　その言葉と共に、彼女の身体が跳ねるように震えた。 　びくびくと痙攣し、俺をきつく抱きしめる。 　「いっ……いっちゃいましたぁ……♡　あぁ……だめ……こんなに気持ちいいの……♡」 　涙が頬を伝いながら、それでも彼女は笑っていた。 　満ち足りた、優しい笑顔で。 　「わたし、未来人なのに……未来のことばっかり考えてたのに……いまが、一番、大事だったんですね……♡」 　俺は彼女の頭を撫で、そっと抱き寄せる。 　布団の中、ふたりの汗と吐息と、熱が静かに混ざり合っていく。 　「ねぇ……もう少し……このままで……いいですよね……？」 　「もちろん。ずっと……朝比奈さんと、こうしていたい」 　「……そんなこと言ってくれたら……また、変な気持ちに……なっちゃいます……♡」 　その言葉と甘い吐息に包まれながら、ふたりの夜は、まだ終わらなかった。 　時間の流れを超えて。 　未来人と、普通の高校生が、心も体も、深く深く結びついた夜だった。