長門と一晩中 5
【第5章:無音の熱、揺れる感情と終着点】 布団の中で、俺たちは互いの鼓動を感じながら密やかに寄り添っていた。 夏の夜。障子の外では虫の声が遠く鳴き、冷房のない部屋の空気はじっとりと肌にまとわりつく。そんな中で、俺の胸に頬を寄せる長門有希の肌は、不思議なほど心地よい体温を帯びていた。 何も言葉を交わさなくても、ただこうしているだけで満たされていく。それは、これまで味わったことのない、静かで熱を孕んだ時間だった。 長門の手が、俺の胸の上でわずかに動く。指先が、俺の肌をなぞるように滑り、胸元をくすぐるように触れた。 「……もっと」 小さな声。けれど、その声には甘く滲むような吐息が混じっていた。 俺は彼女の言葉に応えるように、身体を重ねていく。ぬくもりが、ゆっくりと溶け合っていく。彼女の脚が俺の腰に絡みつき、布団の下で絡みつく肌と肌が、熱く柔らかく沈み込んでいった。 「……ん……あ……」 長門の瞳が潤み、瞼を震わせながら俺を見つめる。その視線だけで、身体の奥が焼けるように熱くなる。 唇を重ねた瞬間、彼女の身体が小さく跳ねた。舌を絡めると、甘く震えた吐息が、俺の喉元に零れる。 「……ふ……ん……もっと……」 熱が、言葉に、表情に、体温に乗って伝わってくる。彼女の冷静だったはずのその瞳が、欲望に溶かされていく様が、たまらなく愛おしかった。 彼女の胸に手を滑らせると、たわわに膨らんだ柔らかさが手のひらを包み込んだ。長門は小さく息を呑み、そのまま身を委ねる。 「……そこ……いい……」 浴衣は既に脱ぎ捨てられ、長門の身体は無防備なまでに晒されていた。 その柔らかさと温もりを確かめるように、ゆっくりと抱きしめながら、俺たちは互いの身体を溶かし合っていく。 腰を沈めた瞬間、長門の唇からひときわ甘い吐息が漏れた。 「……ぁ……来てる……」 深く、ゆっくりと、そして確かに。俺の全てが彼女に包まれていく。 抵抗も戸惑いもなかった。ただ、すべてを受け入れてくれる。そんな覚悟と優しさが、彼女の体温に宿っていた。 「っ……動いて……いい……」 布団の中で、長門の腕が俺の背を強く抱きしめる。その指先は震え、汗ばんだ肌に滑る。 「……深い……あなた……感じる……」 俺の腰が動くたび、彼女の脚が強く絡み、指がシーツを掴んで震える。 「……壊れそう……でも……好き……」 彼女の身体が震え、背を反らせた瞬間、俺の名をかすれた声で呼んだ。 「……い……ぁ……っ……」 甘くくぐもった喘ぎが、俺の耳元で何度も零れた。 そのまま俺も、彼女の中で深く果てた—— 瞬間、すべてが白くなるような感覚の中、ただ彼女の腕の中で溶けていった。 互いの身体がぴったりと重なり、体温が混ざり合って、まるでひとつの存在になったようだった。 しばらく何も言わず、俺は長門の髪に顔を埋めていた。彼女の香り、肌の感触、吐息の熱さ。そのすべてが、俺の身体に刻み込まれていく。 「……ぬくい」 静かに彼女が呟いた。瞳は細く開かれ、頬は紅潮し、唇はうっすらと濡れていた。 「……意味、ない。でも……好き」 俺は彼女の手を取って、そっと唇を重ねた。 「お前はもう……立派に人間だよ。俺の、大切な恋人だ」 その言葉に、長門はわずかに目を細め、俺の胸に顔を埋めた。 「……このまま……ずっと……」 静寂の夜。虫の声も止み、部屋にはただ、ふたりの甘い吐息だけが残っていた。 俺たちは確かに、ひとつになった。その想いだけが、心の奥底で、静かに燃えていた。