長門と一晩中 2
【第2章:自己改変と混浴と、許容された欲望】 ——俺は、長門有希の身体に異変を感じていた。 具体的に言えば、胸が、明らかにデカくなっていた。 いや、元々それなりにあった。でも今のそれは、もはや“それなり”のレベルじゃない。浴衣の隙間から覗く谷間はまるで反重力構造かと疑うほどで、俺の二の腕に触れる感触なんかは、タオル越しですら柔らかすぎて罪深かった。 そして今、俺たちはまたしても——というか、何故か連日で——貸切の混浴風呂に浸かっていた。湯けむりに隠されながらも、彼女の白い肌がふわりと照らされ、艶やかに揺れて見える。 「……何か言いたそう」 長門が、ぴたりと俺の隣に座り直す。肩が触れた瞬間、重力のような存在感を放つ双丘が俺の腕に押し寄せてきた。 「いや、その……胸、でかくなってね?」 「うん。変えた」 「変えた……って、どういうことだよ。そんな簡単にできんの?」 「自己データの空間構成パラメータを変更した。肉体構造、質量分布、表面張力——すべて、任意に調整可能」 「なんで……っていうか、なんでそんなことを?」 「あなたが、好きだから」 ズドンと心臓に来た。いや、重力並の衝撃だった。まさかこんなにさらっと、爆弾みたいな告白が来るとは。 「あなたが見ている視線、観測済み。あなたの脳波、呼吸、血流変動から導き出された興味対象部位——わたしの胸だった」 「観察すんな恥ずかしい!」 「でも、あなたが見て喜ぶなら、もっと見せたくなる。あなたにだけ、触れてほしい」 そう言って、彼女はタオルをゆっくりと直す。だが、直した先のタオルはさらに微妙に短くなっていて、むしろ露出が増えていた。胸の谷間が、湯気の合間に丸見えになる。 「……どう? 大きすぎた?」 少しだけ、不安そうに俺を見つめる瞳。無口で無感情に見えるその奥に、確かに“乙女”な彼女がいた。 俺は、そっと手を伸ばす。 「……触れてもいいのか?」 「うん。あなたになら、全部許す」 そっと添えた手のひらに、重たくて、柔らかくて、あたたかい感触が伝わる。その感触に、喉が鳴り、思わず息を吸い込んだ。 「……すごいな、ほんとにデータ改変でここまで……」 「実際の触感も調整した。“あなたが心地よい”と感じる圧力、温度、弾力性——最適化してる」 「まさかの専用設計かよ……」 彼女の手が俺の手を重ねる。 「……もっと触れて。わたしを、あなたの指で知って」 その声は、小さく震えていた。 長門有希は、無口で、感情表現が不器用で、でも……俺だけに、自分の全部を見せようとしてくれている。 湯けむりの中、2人きりの混浴で、彼女はただ静かに俺を見つめながら、そっと俺の背に腕を回してきた。 肌が密着する。湯の中で、体温とは違う温かさが伝わってくる。彼女の吐息が、耳元でふわりと触れた。 「……ん、ふ……」 その小さな吐息に、心拍が跳ねた。彼女の指先が俺の胸元を撫で、指が水面の下で俺の腰に添う。 「あなたの反応……好き」 「……俺も、好きだ。お前の全部が、好きだ」 「じゃあ、全部あげる」 彼女の唇が、すっと近づく。ほとんど重なる距離で、彼女は目を細め、俺の首筋に頬をすり寄せた。 「ふぅ……ん……あなたの匂い、落ち着く」 囁くような声に、ゾクリと背筋が震える。視線が交差し、次の瞬間、俺たちはそっと唇を重ねた。 濡れた唇と唇が、熱を分け合いながら重なり、互いの呼吸を確かめ合う。 長門の胸が俺の胸に押しつけられ、柔らかく、蕩けるように重なる。手のひらの中で、彼女の体がびくりと震えた。 「ん……っ、あなた……すごい、熱い」 唇を離した直後、彼女はうっとりとした瞳で俺を見つめる。そして—— 「……続きは、部屋で」 その一言に、俺の全神経が溶けかけた。湯気の中、彼女の白い肌がきらめくように濡れていて、まるで幻のように美しかった。 このあと、俺たちは湯あたり寸前まで、抱き合うように寄り添い、部屋へと帰っていった——彼女の大きな胸の鼓動と、甘く震える吐息を耳に残しながら。