火の魔法陣
夕陽の光が差し込む神殿の奥で、私は息を呑んだ。 目の前に立つ青年――ルクスの両手には、紅く燃える二つの魔法陣が浮かんでいた。 それは普通の炎ではない。 古代王国が禁忌として封印した、“魂を燃やす火”だった。 「……制御できないなら、その力はお前を喰うぞ」 背後で老魔導士が警告する。 だがルクスは震える手を握り締め、前を向いた。 神殿の床が揺れる。 闇の裂け目から、黒い魔獣が這い出してきた。 人々を滅ぼした災厄――《黒焔竜ヴァルガ》。 恐怖で足が竦む中、ルクスだけは一歩踏み出した。 「逃げてたら、また誰かが死ぬ……!」 右手の魔法陣が回転し、紅蓮の炎が渦を巻く。 左手の陣が共鳴し、無数の古代文字が光を放った。 次の瞬間、轟音と共に炎の柱が天井を突き抜ける。 それは破壊の火ではなかった。 誰かを守りたいという願いが形になった、“意志の炎”。 黒焔竜が咆哮を上げる。 だがルクスの瞳には、もう迷いはなかった。 「これが俺の――火の魔法陣だ!!」
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