亡国の蛙姫
かつて緑豊かな王国エルフィリアには、美しい王女がいた。 翡翠色の髪を持つ彼女は民に愛され、次代の女王として期待されていた。 しかし王国の宰相であり闇の魔術師でもあったグラドは、その人気を恐れていた。 戴冠式の前夜。 グラドは王女に呪いをかける。 「日が沈めば、お前は醜い蛙となる」 その瞬間、王女の身体は小さな蛙へと変わった。 王は呪われた娘を恐れ、真実を確かめることなく城から追放した。 王女は泣きながら森へ消えた。 だが彼女のそばには、一匹の小さな蛙がいた。 それは幼い頃から彼女を守ってきた森の精霊だった。 昼は人間、夜は蛙。 孤独な旅が始まった。 やがて王国はグラドの支配下に落ちる。 重税に苦しむ民。 消えていく森。 荒れ果てる城。 その噂を聞いた王女は決意する。 「私からすべてを奪った者を許さない」 歳月をかけ、彼女は各地で剣と魔法を学んだ。 昼の姿では旅人として過ごし。 夜の姿では蛙として城へ忍び込み、敵の情報を集めたりもした。 誰も小さな蛙を警戒しなかった。 そして10年の時を経て、王女は王城へ帰還する。 王座の間で待っていたグラドは笑った。 「蛙姫が復讐に来たか」 激しい戦いの末、王女は聖剣を突き立てる。 だが最後の瞬間、彼女は気付いた。 呪いを解くには憎しみではなく、呪いの主を許す心が必要だったのだ。 リリアーナは剣を引き抜き、言った。 「私はあなたのようにはならない」 その言葉とともに呪いは砕け散る。 グラドは力を失い、王国は解放された。 日が沈む。 蛙の姿になることは、もうない。 王女の肩にいた小さな蛙の精霊の姿はもう彼女にはみえなくなっていた。 こうして「亡国の蛙王女」と呼ばれた少女は、復讐の果てに王国を取り戻し新たな女王として平和な時代を築いたのである。
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