天空図書館
私は、空を見上げるのが好きだった。 地上での生活は息苦しく、人混みの中にいても、いつも独りだった。だから私は毎晩、屋上へ行き、雲の向こうに何か別の世界があるのではないかと想像していた。 あの日も、青く澄んだ空を眺めていた。 すると突然、白い羽根のような紙片が風に舞い、私の足元へ落ちてきた。それは古びた栞だった。表には金色の文字で、こう刻まれていた。 ――「天空の図書館へようこそ」 次の瞬間、世界が光に包まれた。 気づけば私は、雲の海に浮かぶ巨大な図書館の前に立っていた。塔は空へ突き刺さるように高く、壁一面に本棚が並んでいる。窓から差し込む光が、本の背表紙を黄金色に照らしていた。 扉を開くと、静寂の中で紙の擦れる音だけが響く。 そこには、数え切れないほどの本が眠っていた。 過去の物語。 まだ生まれていない未来の記録。 誰にも語られなかった秘密。 私は吸い寄せられるように、本棚の奥へ進んだ。 そして、一冊の本を見つける。 深い青色の表紙。 触れた瞬間、胸が強く脈打った。 表紙には、私の名前が書かれていた。 恐る恐るページを開くと、そこには私の人生が綴られていた。幼い頃の記憶、隠してきた涙、誰にも言えなかった願い。そのすべてを、この図書館は知っていた。 けれど最後のページだけは、真っ白だった。 「続きは、あなたが書くのです」 背後から聞こえた声に振り返ると、白髪の司書が静かに微笑んでいた。 彼は羽根ペンを差し出した。 私は震える手でそれを受け取る。 窓の向こうでは、青空がどこまでも広がっていた。 ここは、運命を読む場所ではない。 自分の未来を書き始める場所なのだと、私は初めて知った。
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