その遺跡は、“空を見たまま”石となっていた。
冒険とは、時に── 人が触れてはならないものへ、足を踏み入れることでもある。 それは、鬱蒼とした森の奥に眠る遺跡だった。 外から見れば、ただ古いだけの石造建築。 崩れかけた壁面には深い緑の苔が貼りつき、 蔦がまるで血管のように這い回っている。 陽の差し込む時間が極端に短いのだろう。 空気は湿りきっていて、 肺へ吸い込むたび、見えない胞子が喉の奥へ沈んでいく気がした。 微かな風が吹くたび、 じっとりとした冷気が肌を撫でる。 まるでこの場所だけ、 森に呑み込まれながら、 ゆっくり腐っているようだ。 けれど──本当に異様だったのは、 内部へ足を踏み入れてからだ。 「ひっ……。」 喉が、勝手に鳴った。 私は思わず息を呑み、 その場に縫い止められたように立ち尽くす。 そこには、 無数の石像が並んでいた。 いや、並んでいた……という表現は違う。 “途中で止まっていた”。 誰もが天を仰ぎ、何かを見ている。 助けを求めるように。 あるいは、理解してはいけない何かを見てしまったように。 口を開いたまま、目を見開いたまま、 恐怖とも捉えられるを顔に刻みつけて。 造りもの…… にしては、あまりにも生々しい。 まるで、 ほんの数秒前まで生きていたものを、 そのまま固めたみたいに。 「ここ……はやく離れた方がいい……。」 自分へ言い聞かせるように、 私は小さく呟いた。 声がやけに小さく聞こえる。 この遺、音を吸っている。 そう思った瞬間、 ぞわり、と背筋を冷たいものが撫でた。 悪寒──という言葉では、 きっと足りない。 本能そのものが、 「振り向くな」と叫んでいた。 何かがいる。 私を見ている。 その気配だけが、 首筋へぬるく貼りついて離れない。 確かめたい衝動が、 喉元まで込み上げる。 けれどその瞬間、 目の前の石像と視線が合った。 ぎょろり、と。 錯覚だったのかもしれない。 それでも私は、確かに見た気がした。 “やめろ”と。 そう警告するような、 絶望に濁った眼差しを。 生唾を飲み込み、 私はじりじりと出口へ向かう。 一歩。 また一歩。 焦るな。 走るな。 何に対して覚えているかもわからないのに、 そんな考えだけが頭の中を巡っていた。 出口まで、あと少し。 その時だった。 「……シュシュ。」 左耳のすぐ近くで、何かが鳴いた。 蛇のような。 けれど、生き物とも断言できない、湿った音。 私は悲鳴すら上げられず、 反射的に駆け出していた。 枝が頬を裂く。 泥が跳ねる。 肺が焼ける。 それでも止まれなかった。 遺跡から、一秒でも遠くへ。 あそこから離れなければ、 きっと“何か”になる。 そんな確信だけが、 足を動かしていた。 ………… やがて私は、大木へ両手をつき、 崩れるように膝を落とした。 荒い呼吸の合間に、何度も咳き込む。 ──生きている。 その事実だけが、 ひどく現実感を持って胸へ沈んだ。 恐る恐る振り返る。 けれどもう、 遺跡の姿は見えなかった。 森の奥深くへ溶け込み、 最初から存在しなかったかのように、 静寂だけが広がっている。 だが、脳裏には焼きついて離れない。 あの石像たちの、苦悶に歪んだ顔。 空を見上げたまま固まった、 絶望の表情。 そして……怪しげな鳴き声のような、音。 (あそこは、一体なんだったのだろう。) 世界には、足を踏み入れた瞬間、 命を奪われる場所が存在するという。 そこに悪意があるかどうかは関係ない。 火に触れれば焼けるように。 深海で呼吸できないように。 ただ、“そういう場所”として、 そこに在るだけなのだ。 あの遺跡も、きっと──。 私は乱れた服を直そうとして、左肩へ触れた。 ……べちゃ。 粘ついた感触が、指へまとわりつく。 心臓が、嫌な音を立てた。 震える手で見る。 そこには、 半透明の粘液がべっとりと付着していた。 まるで。 何かに、触れられていたみたいに。 私は息を呑み、 しばらくその場から動けなかった。 その間に、思い至った。 場所も。 物事も。 人でさえも。 外側だけでは、 決して本当の姿などわからない。 一歩踏み込めば、 そこには想像もしなかった“内側”が広がっている。 けれど、内側へ足を踏み入れたからといって、 必ずしも真実へ辿り着けるわけでもない。 理解する前に、 壊れてしまうことだってある。 あの遺跡も、 きっとそういう場所だったのかもしれない。 私たちは、常に何かに試されている。 理解できないものに惹かれ、 見えない流れへ呑まれながら、 その中で何かを見つけ、 外見を信じ、 無防備に近づいてしまう。 しかし、その果てに命を脅かされても── 気づいた時にはもう、 手遅れなのだ。 その時には既に、 後の祭りなのだから。
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