風紀検査
始業前の廊下に女子生徒たちが並ぶ。 スカートの裾を押さえ、露骨に不満そうな顔の列。 その視線の先には、俺——この学園で風紀検査を担当する不運な教師が立っていた。 ……いや、不運というのは表向きの話だ。 建前としては教員の誰もが避けたがる厄介な役目を、 俺が毎回“仕方なく”押し付けられている、ということになっている。 だが本音は違う。ガキどものパンツそのものに興味があるわけじゃない。 だが、渋々スカートをたくし上げて、赤面して視線を逸らすその顔…… あれさえ拝めれば飯が三杯はいける。 だからこそ、俺が毎度担当にされ、陰でつけられたあだ名——“パンツマン”—— も実はちゃんと知っている。気づかないふりをしているだけだ。 いいさ、呼ばせておけ。むしろよくつけたもんだとすら思っている。 列の先頭の生徒がため息交じりに言った。 「……こんなの、本当に必要なんですか。」 「規則は規則だ。さあ、スカートを上げろ。」 不満顔のままスカートをつまむ。ちらりと覗いたのは、白の下着。規則に沿っている色だ。 だが、一瞥して俺は眉をひそめる。 「ふむ、白には違いない。だが……飾りが多すぎるな。レースにリボン。まるで見せびらかすためのようだ。」 「はあ!? これくらい自由でしょ!」 生徒の赤面まじりの反論に、後列から忍び笑いが起こる。 さらに俺の視線は、布地の一箇所に止まった。下着が、不自然に盛り上がっている。 「……おまえ、毛、多いんだな。」 「な、なっ……!?!? 先生、何言ってんですかっ!!」 顔を真っ赤にして跳ねるように抗議する生徒。 その様子に、廊下はざわめきと笑いに包まれる。 俺は小さく肩をすくめて、検査表に赤を入れた。 表向きは「嫌々押し付けられている」役目。 だが本音は——今日も飯がうまくなる朝を過ごしている。それだけのことだった。