【全部乗せ】紙袋の中身は

布の隙間から覗く素肌に、結び目がひとつ、またひとつと添えられていく。 その衣は、どこかで見た“戦う者”の装い――けれど彼女に与えられたのは、戦いではなく受け入れの儀だった。 「……っ、これ……ほんとうに着るの？」 鏡の前、黒いくノ一装束が身体にぴたりと張りつき、彼女の体温を奪ってゆく。 その上から、衣の隙間を縫うように縄が通される。 拘束具としてではない。むしろ、装飾のように美しく、逃げ道を塞ぐように。 手首が揃えられ、膝が折らされ、最後に唇を塞ぐ黒のテープ。 さらに視界を覆うテープが、すべての世界を閉ざす。 「……んぅっ、ふ……ふぅん……」 音を奪われた身体が、代わりに熱をこぼす。 わずかな衣擦れや縄の摩擦でさえ、彼女の感覚を過敏に震わせていく。 夫の指先が、迷いなく忍び込む。 衣の中をすくうように、結び目の間をほどくように、深く、静かに彼女を探っていく。 「っ……ん、んんぅ……っ！」 身体は縛られているのに、内側から何かが崩れていく。 羞恥に濡れる奥に、かすかな悦びの芽が膨らんでいた。 ――視えない世界の中で、彼女は今、 かつてないほど鮮明に、自分の“本性”を感じていた。

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